育休くらいでガタガタ言ってられない
介護離職:14万4800人 前年比4割増−−06年10月〜昨年9月
--
家族の介護や看護のために離職・転職した人が06年10月からの1年間で14万4800人に上ったことが、総務省の就業構造基本調査で分かった。前年同期より4割増え、過去10年で最も多い。うち男性は2万5600人で9年前の2・1倍。一方で介護休業の取得率は極めて低く、高齢化と核家族化の中で介護の負担が働き盛りの雇用をおびやかしている。(13面に「遠き親へ」)
調査は、毎年10月から翌年9月までの1年間に離転職した人数とその理由をまとめている。1年ごとの集計を始めた97年(97年10月〜98年9月)は8万7900人。その後99年に10万人を超え、02年に10万人を割り込んだが、再び増加に転じた。
離転職者のうち男性が占める割合も増加傾向にある。およそ半数が40〜50代の働き盛りで、06年の男性離転職者は05年(1万9100人)の34%増となっている。
育児・介護休業法では、家族に介護が必要な際、通算93日の休業を取得できる。だが厚生労働省の調査では、常用労働者のうち取得者は04年度で0・04%にとどまる。05年4月に取得回数の制限が緩和されたが離職に歯止めがかからない。法改正を前に、同省は今秋再調査する方針。
仕事と家庭の両立を研究している独立行政法人労働政策研究・研修機構の池田心豪(しんごう)研究員は「高齢人口が増え、きょうだいの数も減る中で、親の介護に直面する労働者は今後も増える。退職も休業も選択できず、仕事と家庭の板挟みで悩む管理職も多い」と分析する。そのうえで「育児に比べ介護の問題は誰がどれだけ抱えているかが職場で見えにくいが、実効性ある支援のためには実態とニーズの把握が重要だ」と話している。【磯崎由美】
--
介護離職が増加している。これまでは離職するのは女性が大半だったが、男性もその例外ではなくなってきている。介護は、例えば、脳梗塞で半身麻痺が残り介護が必要な場合など、その発症は、予告なくある日突然起こる。「まさか僕の親はまだ…」「私の親はまだ大丈夫」という思い込みの根拠はどこにもない。交通事故による要介護状態というのも同様に起こり得る。
危機管理的視点でいくと、要介護のための突然の休職や離職よりも、育児休業取得ははるかに予測しやすい。出産予定日があるのだから、「あと半年後には育休」「そろそろ予定日」など、計画的に休暇に対して準備ができる。しかも、子どもの場合は、遅かれ早かれ成長し、いつかは独り立ちする。少しずつでも子育ては楽になっていく。一方、介護の場合は、たいていの場合、どんどん介護負担が重くなっていく。そして、なによりも「いつ介護が終わるかわからない」という側面をもつ。
要するに、
従業者の育休に対応できない企業は、
介護休暇や介護離職にも十分対策できない。
ここからは、僕の憶測ではあるが、「介護くらいで会社を辞めるなんて、マジメに仕事を考えていない」という意見もあると思う。だが、介護で辞める決断をする人は、基本的に家族思いのマジメな人だ。自分を育てた親や人生の伴侶や子どものことに目を向けられる人だ。そして、たいていそういう人は仕事でも顧客思いであったり同僚思いであったりする。逆に、「あんな役立たず、辞めればいいのに」「いてもいなくても一緒」という人に限って、どんなに身近な人が要介護状態(や介護負担に苦しんでいる状態)であっても辞めない。つまり、「希望退職制度」と同じ事態なのではないだろうかと考える。
辞めて欲しくないような優秀な人材を離職させるのは、これは大企業よりも、むしろ一人当たりのウェートが大きい中小企業にとって深刻な問題となる。「育休なんて、大企業や公務員向けの話だ」ではない。特に個人事業者であればあるほど、介護が仕事にあたえる影響は大きくなる。理想は、介護しながら仕事も両立させられるようなワーク・ライフ・バランスだ。子育てしながら…すら難しいのだから、この理想はものすごくハードルが高い。だけど、これを乗り越えないことには、日本の将来はみえてこない。
--
家族の介護や看護のために離職・転職した人が06年10月からの1年間で14万4800人に上ったことが、総務省の就業構造基本調査で分かった。前年同期より4割増え、過去10年で最も多い。うち男性は2万5600人で9年前の2・1倍。一方で介護休業の取得率は極めて低く、高齢化と核家族化の中で介護の負担が働き盛りの雇用をおびやかしている。(13面に「遠き親へ」)
調査は、毎年10月から翌年9月までの1年間に離転職した人数とその理由をまとめている。1年ごとの集計を始めた97年(97年10月〜98年9月)は8万7900人。その後99年に10万人を超え、02年に10万人を割り込んだが、再び増加に転じた。
離転職者のうち男性が占める割合も増加傾向にある。およそ半数が40〜50代の働き盛りで、06年の男性離転職者は05年(1万9100人)の34%増となっている。
育児・介護休業法では、家族に介護が必要な際、通算93日の休業を取得できる。だが厚生労働省の調査では、常用労働者のうち取得者は04年度で0・04%にとどまる。05年4月に取得回数の制限が緩和されたが離職に歯止めがかからない。法改正を前に、同省は今秋再調査する方針。
仕事と家庭の両立を研究している独立行政法人労働政策研究・研修機構の池田心豪(しんごう)研究員は「高齢人口が増え、きょうだいの数も減る中で、親の介護に直面する労働者は今後も増える。退職も休業も選択できず、仕事と家庭の板挟みで悩む管理職も多い」と分析する。そのうえで「育児に比べ介護の問題は誰がどれだけ抱えているかが職場で見えにくいが、実効性ある支援のためには実態とニーズの把握が重要だ」と話している。【磯崎由美】
--
介護離職が増加している。これまでは離職するのは女性が大半だったが、男性もその例外ではなくなってきている。介護は、例えば、脳梗塞で半身麻痺が残り介護が必要な場合など、その発症は、予告なくある日突然起こる。「まさか僕の親はまだ…」「私の親はまだ大丈夫」という思い込みの根拠はどこにもない。交通事故による要介護状態というのも同様に起こり得る。
危機管理的視点でいくと、要介護のための突然の休職や離職よりも、育児休業取得ははるかに予測しやすい。出産予定日があるのだから、「あと半年後には育休」「そろそろ予定日」など、計画的に休暇に対して準備ができる。しかも、子どもの場合は、遅かれ早かれ成長し、いつかは独り立ちする。少しずつでも子育ては楽になっていく。一方、介護の場合は、たいていの場合、どんどん介護負担が重くなっていく。そして、なによりも「いつ介護が終わるかわからない」という側面をもつ。
要するに、
従業者の育休に対応できない企業は、
介護休暇や介護離職にも十分対策できない。
ここからは、僕の憶測ではあるが、「介護くらいで会社を辞めるなんて、マジメに仕事を考えていない」という意見もあると思う。だが、介護で辞める決断をする人は、基本的に家族思いのマジメな人だ。自分を育てた親や人生の伴侶や子どものことに目を向けられる人だ。そして、たいていそういう人は仕事でも顧客思いであったり同僚思いであったりする。逆に、「あんな役立たず、辞めればいいのに」「いてもいなくても一緒」という人に限って、どんなに身近な人が要介護状態(や介護負担に苦しんでいる状態)であっても辞めない。つまり、「希望退職制度」と同じ事態なのではないだろうかと考える。
辞めて欲しくないような優秀な人材を離職させるのは、これは大企業よりも、むしろ一人当たりのウェートが大きい中小企業にとって深刻な問題となる。「育休なんて、大企業や公務員向けの話だ」ではない。特に個人事業者であればあるほど、介護が仕事にあたえる影響は大きくなる。理想は、介護しながら仕事も両立させられるようなワーク・ライフ・バランスだ。子育てしながら…すら難しいのだから、この理想はものすごくハードルが高い。だけど、これを乗り越えないことには、日本の将来はみえてこない。
- 関連記事
-
- 男性の料理志向
- 父親の痕跡
- 育休くらいでガタガタ言ってられない
- 効率優先のWLBを求めるなら
- 「楽しみの種」を拾おう!