東京新聞連載 115回 マンネリメニュー

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講演ではよく話している内容です。講演では「マンネリは○○だ!」の空白部分を当ててもらう流れの場合もあります。○○の中には、いろいろ入るのですが、たいていは良い意味の言葉が入りません。そこで「マンネリは文化だ」という話に。
例えば、郷土料理というのは、その地方でその季節になると、「決まって」食べるから郷土料理になったわけです。「決まって」食べること、つまりマンネリの一つです。正月の雑煮も、毎年毎年「一昨年は京都風、去年は仙台風だったから、今年は福岡風にしよう」という家は、かなり珍しいと思います。記事にもありますが、ほとんどの家の朝ご飯はマンネリメニューです。
マンネリメニューというのは、逆にいうと「決まって」食べても飽きない、しばらく食べてないと無性に食べたくなる、なんとなくよく食べている…など、自分たちの暮らしにマッチしたメニューなはずです。もちろん、考えるのが面倒だから毎日同じメニューというマンネリもあるでしょう。それでも家族から文句や別メニューのリクエストがこないのなら、それはそれで家族の状況にマッチしているということです。
マンネリメニューに逃げたくなる背景の一つとして、「今日の晩ご飯、なに食べたい?」と聞いて「なんでもイイよ」という答えが帰ってくるというパターンが考えられます。「じゃ、いつもと同じでイイや」と。
人類の歴史上、ほんの少し前までは、脱マンネリしたくてもできなかった時代でした。そこにあるモノを食べるしかありませんでしたから。村の誰かの結婚だったり、出産だったり、葬式だったり、祭りだったり、そんな時だけ、ちょっと違う料理が食べられたのです。一般家庭で「マンネリじゃダメ」と言えるようになったのは、ごくごく最近のことです。自分で耕作し、狩猟して、釣りして、飼育して、解体して…それだと、そんなに多くの種類の料理は食べられません。人類の大半は、長い長い歴史の中の大部分を、来る日も来る日も同じようなモノを食べて、命を繋いできています。今もそういう国や地域の人達が大勢います。
ひとことで言うなら、
マンネリ上等!
です。
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